「こちらです」
大笑いの意味も解らないまま、スーツの男の人の後ろを歩くこと数分。
促されて、目の前にあるその四角い入り口をくぐると――。
「わぁ……っ!」
目の前に、緑が萌え、光が溢れる大きなサッカー場が現れた。
「スタジアムにいらっしゃるのは、初めてですか?」
「はい……! すごい!! キレイ!! こんなにキレイな所なんですね!」
興奮気味に話す私の顔を、満足そうに眺めたスーツの男の人は、にっこりと微笑んで、
「そう言っていただけると、私達も嬉しいです。さぁ、お席までご案内します」
興奮する観客の間をすり抜け、ゴール裏のパーテーションで区切られた席へ私を案内してくれた。
「こちらでご覧下さい。私はこれで失礼しますが、何かありましたら、近くの係員に“翔太を呼んでくれ”とお申し付け下さい」
「え……?」
「後で係員に、お飲物を持って来させますので。オレンジジュースとお茶と炭酸、どれが宜しいですか?」
「あ……えっと、じゃーオレンジを」
何だかよく解らない展開に、混乱気味の私は、ただただ呆気に取られるだけで……。
「オレンジですね。かしこまりました。それでは、私はこれで」
そのまま頭を下げて去ろうとしたスーツの男の人を、ハッとして呼び止めた。
「あっ! あのっ!!」
「……はい。どうかされましたか?」
「これ、宮崎航太のジャージなんですけど」
「航太の、ですか?」
「はい。昨日、色々とあって預かっていたんです。それで……今日は、これを返す為にここに」

