きせき

目の前に広がるのは、ベッドルーム。

ベッドの上の茶色の毛布は、朝起きた時のままなのか――ぐしゃぐしゃに丸められていて……。


この部屋にきて初めて目の当たりにした、航太の“生活感”。

「いや、あの……っ!! 違うの!」

「違うって、何が?」

ちょっと掠れた、航太の声が抱きしめられている背中ごしに直接伝わる。

「えっと……そんなつもりじゃなくて、」

覚悟はしてきたはずなのに、さっきから心臓がバカみたいに大きな音を立てていて、これじゃーきっと航太にもバレバレだ。

もう……無理っ!!

心臓が限界を迎えそうになった頃、

「なんつって」
「……え?」

私を抱きしめていた航太の腕の力が、スッと緩んだ。

そして、まるで何事もなかったかのように私からスッと離れていく。

「美青、俺腹減ったぁ~」

「は……ら? え?」

「おー。試合終わってから何も食ってねーし」

「えっ? えっと?」

「メシ作んの、俺も何か手伝わせて」

そのまま彼は、キッチンの方に歩いて行き、呆気に取られる私に“ほら早く!”なんて、呑気に手招きをした。