きせき


「落ち着け!! お前は犬コロか!!」

そんな私に、航太はチョップをくらわせてきたけど。

「だって、ここオシャレ過ぎるよ!」

本当にすごいんだもん。

「そうかー?」

部屋を見渡すと、黒を基調とした家具で統一されていて、どれもピカピカ。

「この贅沢者!」
「は!?」

「ここ、すっごいじゃん!!」

「あ~……ここ下の方の階は、普通の人も住んでるマンションでさ。この部屋はショールームとして使ってたんだと」

「へぇー」

「だから安かったらしいし、家具もその時のらしいよー」

興味なしと言わんばかりに、冷蔵庫からミネラルウォーターを2本取り出した航太は、そのうちの1本をポーンと私に投げてよこした。

「ありがと!」

よく冷えたペットボトルを受け取り、再び部屋の探索を開始する。

航太はそれを、とくに止めることもなく“好きなだけどーぞ”と、笑いながらソファーに腰を下ろした。

LDKの横には、もう一部屋あるのか……。

その大きな部屋を区切るように、横開きの扉があって。

「ねぇ! こっちは~?」

すっかりテンションの上がった私は、それを思い切りスライドさせた。

「……っ」

させたんだけど……。

目の前に広がったその光景に、心臓が大きく鼓動を打った。

一瞬動きの止まった私の背後から長い腕がスッと伸びてきて……。

いつの間にここまで来ていたのか。

戸惑う私を、航太が後ろからギュッと抱きしめたんだ。

ドクン。

ドクン。

外まで聞こえてしまいそうな、大きな心臓の音。

彼は、そんな私の頭にあごを乗せ……

「もうそっち行くの?」

くすっと笑って、そう囁いた。