きせき


スーパーで軽く買い物をした私達は、航太が“寮”と呼ぶマンションの前にいた。

「立派なマンションだねー!」
「まぁ、ひとりで住むには十分すぎるわな」

驚く私に対して反応を示さない航太は、オートロックの扉を解除して、エントランスをスタスタ歩いて行く。

大きめのエレベーターに乗り込み、17階のボタンを押すと、それがゆっくり動きだした。

航太、こんな所に住んでるんだ……。

それでなくとも、息が詰まる鉄の箱の中。

そこに乗り込んでから、航太は何も喋らない。

「……」

何か喋ってよ!!

だって、やっぱり……緊張するじゃん。

「美青ー?」
「はっ、はい!!」

別に不貞腐れていたわけじゃないけど、何となく唇を尖らせて下を向いていたら、急に航太に話しかけられて。

“何か喋ってよ!!”なんて思っていたくせに、思わず声が上ずる。

それに一瞬驚いた顔をした航太は、人の気持ちになんて気付かずに“ふはっ”と笑い、ちょっと困った顔をして言った。

「そんな緊張されると、俺まで緊張するんだけど」

「ご、ごめん! 私、そんなつもりじゃ……」

思わずワタワタする私を見て、今度はいつもみたいに笑った航太は、そのまま私の頭を撫でて言ったんだ。

「大丈夫だから、普通にしてて。俺、美青が嫌がるようなことは、死んでもできないから」