きせき


「俺の部屋、来ないかなぁと思って」
「航太の……部屋?」
「おー」

突然のことに目を瞬かせた私から、航太はちょっと気まずそうに視線を逸らし、頭をポリポリとかく。

――航太の部屋って……。

「……」

えっ!?
部屋!?

「で、でも……航太って、寮にいるんだよね?」
「あ~、寮って言っても、協会が管理してる普通のマンションの部屋を使ってるだけだから」
「そ、そうなんだ」
「……おー」

「えっと……」
「……」

言葉に詰まった私と、何も言わない航太の間に流れる、気まずい沈黙。

ど、どうしよう。

部屋に行くってことは“そういう事態”になるかもってことを、当然考えちゃうわけで。

「美青?」

戸惑いながらも、俯いていた顔を上げた私を、航太が覗き込んで。

その表情に、

心臓が、ドクンと反応する。

「……うん」
「え?」

「行……く。行ってもいいなら」
「……おー。何もおもてなしできませんが」

そう言って航太は、ちょっとだけホッとしたように片方の眉を下げて笑うと、また私の手をギュッと握って、それをプラプラ揺らしながら歩き始めたんだ。