きせき

「“試合に勝ったら”って言ったもんな」

未だに目を瞬かせる私の頭を、もう一度ポンっと叩き、

「帰ろっか。送ってく」

ひとりで勝手に納得して、私から離れて行こうとする。

「待って!!」

それが、少しだけ淋しくて――……。

その背中に思わず、声をかけてしまった。

ゆっくりと振り返った宮崎航太。

「あ、あの」
「んー?」

「あの、ね?」
「……どした?」

「キス……しても、いいよ?」

「……」
「……」

ボールの音もしなくなった、大きなスタジアム。
そこに流れた、小さな沈黙。

ライトに照らされた、何事かと目を見開く宮崎航太の顔が少し離れたところにあって。

そんなに――……

「見ないでよ」
「は?」

「恥ずかしいからそんなに見ないでっ!!」
「はぁ!? だって、美青サンが急に変なこと言うから!!」

「変なことじゃないもん!! ホントに……っ」
「美青サン?」

「だって!! 今日、宮崎航太、すごい頑張ってたから!! だから、私っ……!!」

「……はい、ストーップ」

ひとりで大声をあげた私の目の前に、急に出された彼の大きな手の平。