大学で語学を専攻していた私は、卒業と同時に旅行代理店に就職した。
大きい会社ではないけれど、ツアーの企画から現地スタッフとの打ち合わせ、添乗まですべて責任を持って任せてくれる社風に惹かれての就職だった。
「佐々木さん」
「はい」
出社してデスクを整理していると、後ろから同僚に声をかけられた。
「常務が呼んでたよ?」
「常務が、ですか?」
「うん。なんだか、新しい企画がどうのこうのって」
「新しい……企画?」
「そう。何も聞いてない?」
「はい」
「そっかー……。何だろうね? とりあえず、10時に常務室に来てくれって」
「わかりました。ありがとうございます!」
新しい企画?
そんなことを今の今まで全く聞かされていなかった私は、小首を傾げて考え込んで。
「まーいっか」
もう少ししたらわかるからと、楽観的に考えて、自分のデスクに再び腰を下ろした。
――突然舞い込んだ、仕事の話。
これが、また私と彼の運命を動かし始める。
――……
―――……

