きせき


「ふー……」

何度か振り返った彼女の背中が見えなくなった頃、私は空に向かって、大きく息を吐き出した。

「さて、どうしようかな……。連絡取れないこともないんだけど……」

ん~。
やっぱり、ここで待ってよう。

そう決めた私は、ゆっくりと来た道を戻り、前に宮崎航太が使った出入口の前のフェンスに寄りかかった。

しばらく同じところで待っていると、試合中に見た選手たちが目の前を通り過ぎていく。

でも、その中に彼の姿は見当たらなくて……。

どうしよう。

少しずつ薄暗くなっていく空。

――やっぱり連絡してみようかな。
そう思ったのと、ほぼ同時だったと思う。

それまで暗かったスタジアムに、ゆっくりと光が灯った。

「あれ?」

そして耳に届いたのは、

“トーーーン……”

スタジアムの中から僅かに響く、サッカーボールの弾む音。

「……」

出入口は薄暗くなっているものの、小さな柵が一つ設置してあるだけで、係員はいない。

勝手に入ったら、怒られるよね?

ん~……。

「ご、ごめんなさぁ~い」

小さくそう呟いて、柵を越えた……その時!!

「こらっ!! 何してる!!」
「……っ!!」

男の人の大きな声が聞こえて、肩がビクンと跳ね上がった。

「な~んてね」
「……」

思わず涙目になって振り返ると、どこからやって来たのか……

腰に手を当てて笑う、お兄さんが立っていた。