そう……だよね。
私、あのことにばっかり気を取られて、一番大事なことを忘れてたよ。
「はい!」
やっと少し晴れた気持ちから、大きくうなずいて、元気に返事をしたその時、
「美青! おはよっ!! 遅くなってごめん~!」
あけちゃんが手を振りながら、私の元に走り寄った。
「――っと、……こんにちは」
私の前にいるお兄さんに気付き、チラリと私に視線をよこしたあと、ぺこりと頭を下げる。
「こんにちは。佐々木様のお友達ですか?」
「……」
お兄様、お仕事モード発動。
「あ、はい」
「そうですか。初めまして。広報担当の宮崎と申します」
目をパチパチとさせるあけちゃんに、これでもかという程の極上スマイルを浮かべながら、頭を下げた。
「初めまして。宮本朱美です」
「宮本様、今日はお越しいただきありがとうございます。存分にお楽しみ下さい」
もう一度あけちゃんに軽く頭を下げると、私の方に向き直り……
「佐々木様も。こちらの不手際で前回ほどいいお席がご用意できなかったのですが、ゴール裏の席ではありますので」
「……」
「“ゴールの瞬間”をお楽しみ下さい」
私にしかわからないように、そんな暗号を残すと“それでは”と去って行った。
――“ゴールの瞬間”=宮崎航太の活躍……ね。
まだ2回しかあったことないけど、何となくあの人の性格が読めてきた気がする。

