北の大陸ユーロネシアに君臨するグレイド・ロジ。
王の間では、二魔の魔族がチェスをしている。

「チェック・メイトです、ロイド様」

透き通るような澄みきった声。
物静かな面持ちに鮮やかな金髪を携えた、ロジの軍師長カイルである。

「容赦ないなお前は……」

おどけた表情で両手を上げる青髪の魔族は、ロジの王にして最も魔王に近いと言われるロイド・ジェシックであった。

するとそこへ、二魔の魔族がノックをして入ってきた。
特命軍のリーダーで闘竜の系譜三男‘光竜のフレア’と、ロジ軍全軍をまとめる軍団長‘魔剣のリュウ’である。

「ロイド様、一体いつまで眠りを取らないおつもりですか?ロジを建国して二百年、国のためとは言え……」

「またそれかリュウよ。私はな、国民の声を聞くのが楽しみなのだ」

ロイドは三つ眼族の末裔で、三つ眼族は魔力以外に特殊能力を有している。
ロイドの能力は千里眼。
ロイドはその千里眼により、自分に向けられた声を聞く事が出来る。

昼間は国事に身を費やし、夜は国民の声を聞く。
これはロイドの日課になっていた。

今の国がロジになる前から、ロイドの睡眠は極端に少ないものだったが、ロジを建国以来、一度も眠りについていない。

「ふっ、今の国がザガンという国名だったあの頃に比べれば、辛い事は何もない。ほら、フレアもリュウも早く職務につけ」

今の国がロジという名前になる前、この国はザガンという国だった。そしてその時代、ザガンは魔界でも悪名を轟かす程の国だったのである。