ーーーーそれは2ヶ月ほど前。


 雪のちらつく冬の日。今日はいつも以上に寒かった。時計台の前に両手を擦り合わせて寒さを紛らわそうとする男の人。
 待ち合わせだろうか? 由香里は失笑したいという衝動を抑えて、目的地に向かった。




 1時間過ぎに用事を済ませて由香里は家路を歩いていると、身体を震わせながら座り込んでいる男が目に入った。
「ちょ、ちょっとあなた大丈夫!?」
 慌てて男の身体に触ると、氷のような冷たさだ。
「だぃ、じょうぶ」
 真っ青な顔に紫色の唇。身体は終始震えている。大丈夫なわけがない。素人の由香里にだってそれくらいわかる。よく見ればさっきの男だと気付いた。
「もしかしてあなた今までずっと待ってたの?」
「う、ん」
 由香里の問に紫色の唇をきゅっと上げ笑った。由香里はふぅ、とため息を吐き取り敢えず喫茶店に入ろうとした、そのとき1人の可愛い女性が歩いてきた。
「それ、あたしの」
 由香里たちの目の前で止まり、彼を指差しながら言った。そしてまた歩きだす。
「ちょっ……」
 文句を言おうとした由香里の口をそっと手で塞ぎ、お礼を言い彼女のあとを追い掛けていた。
 それからは週に2、3回のペースでまたあの彼女を待つため、やっぱり時計台にいた。
 いつからか彼女を待っている彼と話をするようになった。