「おかえりー。」 看護婦のお母さんは、年中家では眠そうな顔をしている。 手を洗って、リビングより先に自分の部屋に行った。懐かしい匂い。高校の時を思い出して、これまた私の心をギュッとさせる。 「彼氏疑ってた?」 階段の方から聞こえる声に振り向く。 「何を?」 「姉ちゃんに違う男がいるって。」 今、その話題は胸にグサッとくる。しかも微妙に合っているから、なんとも言えない。 弟は、そんな私を見て、楽しげに笑う。 「やっぱりなー。」 「違う、よ。」 「別れたら?」