コートの方から、「周防ー。」と呼ばれている。多分、草野さんだろう。早く行かないといけないのに、足止めをしてしまっているのは私だ。

その声を聞いて、すぐにこちらに背を向けると思っていた周防くんが私の首の方に手を伸ばして、服の中に入って体温と同じ温度になっていたネックレスを取り出した。周防くんが、誕生日にくれたもの。

何するのかな?と見ていたら、その小さな紅い石のついたシルバーの花に口付けを落とした。


「頑張ってくるよ。」


私は自信がある。この胸元に揺れる小さな紅い石より、自分の顔が赤いことに。