フェンスを抜けようとした周防くんが肩越しに振り返って、身を翻した。


「ヒグマってね、肉食なんだよ。」


こんな時に何なんだって周防くん以外なら言われるかもしれない。でも、私の話をちゃんと聞いてくれる。


「うん。」

「虎にも勝つことがあるんだって。」

「すごいな。」

「…周防くん、頑張ってね。行ってらっしゃい。」


手にぎゅっとクリスマスプレゼントとして買ったミサンガを渡す。「ありがとう。」周防くんは笑顔を見せる。

そうして、手早く自分の手首に結ぶ。