何のあても無く飛び出して来たわけじゃない。 あたしが向かった先は記憶を失った頃まで住んでいた街。 働いていた会社の友人のもとだった。 「…懐かしい。元気にしてたんだね。」花梨は三年ぶりに突然、訪れたあたしを以前のように部屋に招き入れてくれた。 「引っ越してから全然、連絡しなくてごめんね」 謝るあたしに彼女は静かに首を横に振った。