「お客様、申し訳ございません、 そろそろ閉店のお時間です」 「――あ、はい、わかりました」 ずいぶん長い間、アネモネに居てしまった。 たくさんの吸殻の押し付けられた灰皿と 少し残って冷め切った不自然な甘さの ミルクティーを見やってから席を立ち、 置かれていた5千円札で会計を済ませる。 二人共二杯ずつ飲んでいても、3000円以上残った。 なんとなくそれを、長財布の普段使っていない ポケットにまるごと入れてから領収書を断り、外に出る。