「サヤ、なんかあったら
いつでもうちおいでよ!」
大学を卒業して、
それぞれの新居に引っ越す際
それまでお隣さんだったナカは私にそう言った。
「うん、ありがとう。
ナカも、いつでも来てよ」
「言われなくてもいくって!」
そんなやりとりは現実になって、
社会人になってからもナカは
しょっちゅううちを訪れた。
しかも、アポなしで。
でも嫌だと思ったことはなかったし、
私が訪ねた時もいつだって
ナカは快く受け入れてくれていた。
ナカの会社の愚痴を聞いたり、
博之さんのことを相談したり、
思い出話をしたり、
くだらない話で二人で笑ったり。
そんな時間が、急に恋しくなった。
鞄を手に取り、立ち上がる。
