ビルを出て、早足で駅に向かい、 家の方面の電車に乗り込んだ。 普通に電車に乗って帰るだけなのに、 私は怯えていた。 鞄を抱くようにして持つ。 それは、誰にも取られないようにとか、 これは私のお金なんだから、とか そういうことではない。 自分でもよくわからないけれど、 そうしなければならない気がしていた。 暖房の入っている電車の中なのに、 膝が、指が小刻みに震えている。