ライフ・フロム・ゼロ


もしかして、

ああ、多分、そうだ。

多分この男は見ていたのだ。


宝くじ売り場で私が高額当選したところを。



あのブザー音が鳴ったとき、
周囲の人が何人かこっちを見ていた。

あの中には高額当選すればブザー音が鳴ると、
知っている人もいたに違いない。


『たかられる可能性があります』


そんな売り子さんの言葉を思い出す。
間違いない、このホストみたいな男は、
私にたかろうとしている。


「…失礼します」


「え?」


「この後、用事があるんで」


「番号とかメアドとか聞いちゃ駄目?」


「教えられません!」


それだけ言いきって、席を立つ。
トレイを返却口に返すとき、
手が震えていることに気づいた。


足早にコーヒーショップをあとにする。