この、小さな紙切れに。
この小さな紙切れに、
6億円の価値があるなんて。
6億円って、
三人私がいたとして、
その三人が一生一生懸命働いたとして、
それでようやく稼ぐお金を合計した数字くらいだ。
私が思いつくかぎりの高価な
買い物をしてもまだ余る。
私の年収のゆうに200倍以上。
にわかには信じられなかった。
それを得る権利を、
私は手に入れてしまった。
なんの努力もせず。
なんの期待もせず。
本当に偶然、手に入れてしまったのだ。
その金額のあまりの大きさに、
膝に載せた鞄までもがずしりと重くなった気がした。
目眩のようなものは続いていて、
とりあえず、コーヒーを口に含む。
だいぶ喉が乾いているのにも気が付かなかった。
