「…電車の中ってあったかいね」
「ん、そうだな」
ガタンゴトン…と揺れる電車に
二人並んで座る。
…距離が近いのは、気のせい?
「…電車乗るとね、思い出すの」
「え?」
「……痴漢の事」
「あぁ…そんなこともあったな」
人生初の痴漢に遭った、
あの朝の電車での出来事。
もうあの出来事から乗っていなかったから、
今日も久しぶりに電車に乗るわけだ。
「うん。結構嫌だった」
「そりゃそーだろ」
「でも大崎が助けてくれたから」
「あたりまえだろ。無視するやつのがおかしい」
「優しーね」
「ふつーのことだって」
大崎の言う、
“普通”をしてくれる人が少ないんだよ。
何人か、私が痴漢に遭ってるのに
気付いてたはずだもの。
でも、誰も助けてはくれなかった



