翌日、知らない大人があたしを迎えに来た。
表向きは医者……らしい。
じゃあ、裏は?
そう聞くまえに、医者は口を開いた。
『私達は研究者。君は、刃物の扱いが得意で、血もさほど怖くないと聞いた。だから、人殺しをしてもらう為に、来てもらったんだ。』
人殺し………
研究に使う為の人間を殺す。
当時、まだ十二歳のあたしには、辛い事だった。
でも、母や弟の為。
あたしが犠牲にならないといけないんだ。
分かってる。分かってるよ……
『君には、夜中のみ、我々が指定した人間を殺してもらう。それ以外は、好きに過ごしてくれて構わない。』
「……はい。」
感情なんて捨ててしまえ。
涙なんて必要ない。
そう思ったら、あたしの何処かが変わった気がした。


