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ニ年前。
『っ……ごめんね…ごめんねぇ…』
母は、わた……あたし、を抱きしめて泣いた。
何度も『ごめんね』と言って。
これから、自分がどうなるかなんて、聞かなくても分かる。
売られた。
その事実を、すんなりと受け入れれたあたしは、既に壊れていたのかもしれない。
あたしは、母と、双子の弟との三人暮らし。
父はいない。
あたし達が産まれる前に、行方知らずになった…って親戚から聞いた。
それすら本当かも分からないけれどね。
弟は、凄く出来た子。
何でもできる、自慢の弟だった。
名前は、春稀。
春稀は、あたしを不安げな表情で見てきたから
「大丈夫。」
そう言って、軽く頭を撫でた後、眠りについた。


