【黄昏の記憶】~ファースト・キスは封印の味~



「信じた?」


こくこくこく。


必死に頷き、早く降ろしてと目で訴える。


「それは良かった」


「ひゃっ!?」


フッと浮遊感が消えた次の瞬間、今度は真下に自由落下で、声がひっくり返った。


落ち行く先は、両手を広げて待ち構える策士様の、膝の上。


ナイスキャッチでお姫様抱っこに収まり、にっこり満面の笑みの整った顔をまじかで見て、優花は悟った。


この人は、晃ちゃんだけど、私の幼なじみの晃ちゃんではない、と。


そして、信じざるを得ないこの事実。


どうやら、自分は異世界に、迷い込んでしまったらしい――。