【黄昏の記憶】~ファースト・キスは封印の味~



「それでも、助かる可能性が少しでもあるなら、試してやって下さい。何も出来ないで後から後悔するような真似を、俺は、二度としたくないんです」


語尾の震えに、淡々と語られる言葉の中に、大きくうねるような激しい感情の波が見えるような気がした。


「しかし、この娘は……」


「分かっています。こいつは、『俺の優花』じゃない。そんなことは百も承知です」


俺の優花、じゃない?


意味は分からない。


けれど、


沈痛な、


としか言えないような苦しげな晃一郎の言葉に、心の奥深い所に鈍い痛みが走った。


「それでも、やっぱり優花なんです。イレギュラーでもなんでも、間違いなく優花なんです!」