ジワリジワリと背筋を這い上がってくるのは、痛みではなく、絶望的なまでの恐怖。
横ざまになったトレーラー。
声にならない悲鳴。
回る世界。そして――。
――あ、ああ!?
脳裏にフラッシュバックする陰惨な光景に、心の中の何かが切れかけた、
その時。
「……大丈夫。大丈夫だ」
すうっと、聞き覚えのある声が、耳にしみ込むように届いた。
優しい響きを持った低音の声音は、幼いころから聞きなれた、兄のような幼なじみの声に似ている。
……晃、ちゃん?
「そう、俺だ。俺がちゃんと側にいるから、何も心配するな」
「……っ……あぅ」
自分がどうなっているのか、父と母は無事なのか聞きたくて懸命に口を開くけど、やはり意味のある声にならない。
それでも尚声を上げようとすると、それを制止するように、フワリと額に温もりを感じた。



