【黄昏の記憶】~ファースト・キスは封印の味~



苦しい――。


痛みは感じないのに、どうしようもなく、苦しい。


体が、自分のものだという気が、全然しなかった。


手も足も、指一本でさえピクリとも動かせず、瞼を上げることすらできない。


唯一機能しているのは、耳、聴覚だけだ。


ピッ、ピッ、と言うハイトーンのデジタル音が、一定間隔で鳴っているのが聞こえる。


それ以外は、全く分からない。


「う……っ……」


声を出そうと喉に力を入れてみても、くぐもったうめき声が上がるだけで、言葉にならない。


私、どうなっているの?


お父さんは?


お母さんは?


どこ。


どこいにいるの?