【黄昏の記憶】~ファースト・キスは封印の味~


あれは玲子だが、玲子ではない。


肉体は確かに玲子のものだが、その体を操っているのは、グリードだ。


憑依能力を持つグリードとの戦いは、三年前の、凄惨な記憶を鮮やかに甦らせた。


今の状況は、あまりにも『あの時』と似ている。


優花の真の力が覚醒した、『あの時』と。


優花が『ゴッド・ハンド』と言う能力を受け入れる決断を欠いたために、あの時、パラレルワールドの玲子は、命を落とした――。


泣いても、叫んでも、喚いても、


もう二度とは帰ってはこない、大切な人の命。


――また、繰り返すの?


あんな悲劇を。


あんな苦しみを、また味わうの?――


握りしめた両手の平に、冷たい汗が滲み出す。


逃げ出したい。


だけど、それだけは、絶対できない。


せめぎ合う葛藤を胸に抱き、ただ唇を噛みしめて、玲子から顔を背けないでいるのが精いっぱいだ。