【黄昏の記憶】~ファースト・キスは封印の味~



「――花――、優花っ!」


すうっと意識が覚醒してすぐ耳を叩いたのは、大音量の晃一郎の呼び声。


ほとんど、抱えられるように晃一郎に預けていた体の隅々に、力が満ちてくる。


黒髪が、銀色へ、そして、純白へと変化をとげる。


「優……?」


その変化に気付いたのか、晃一郎は優花の体に回していた両腕を緩めて体を離した。


「大……丈夫」


まだ少し荒い息を整えるように大きく空気を吸い込み、優花は、両足に力を込めて地面を踏みしめる。


――うん。もう、大丈夫。


私は、自分の足で、立てる――。


「……平気。大丈夫だから」


尚も心配げに、体を支えるように添えられているその両腕をそっと押しやり、顔を上げ、真っ直ぐ晃一郎の瞳を見据えて、口の端を上げた。


「記憶も力も、完全に戻ったよ。あ、ついでに現状も把握済み」


一気に記憶と力を蘇らせると、脳に負荷がかかり過ぎる、


だから、晃一郎は、記憶を細切れに蘇らせるように、仕組んだ。


一時間目の現国と二時間目の体育、


それに、三時間目の後の休み時間。


あの『夢落ち』は、晃一郎の仕業。


そして、三時間目の音楽に向かう途中の『階段落ち』、


あれは、おそらく――。