【黄昏の記憶】~ファースト・キスは封印の味~


『優花ちゃん。私にはもう、見ていることしかできないけど……』


優花を励ますようにギュッと握られたその両手には、以前感じられた柔らかい感触も温もりもない。


覚醒した力が感じ取った、その存在の希薄さ。


もうすぐ、限りなく近い存在である優花にすら見えなくなる時がくる。


たぶんきっと、今が、こうして言葉を交わせる最後のチャンス。


――泣いたらだめ。


笑わなくちゃ。


そう思うのに、


深く抉られるような胸の痛みで、上手く笑えない。


『優花ちゃん。負けないで……』


かろうじて耳に届く今にも消え入りそうなその声に、居ても立ってもいられず彼女を抱きしめ、ただ、コクリと頷く。


――うん。負けないよ。


絶対負けない。


優花の心の声に応えることもなく、


微かな優しい花の香りだけを残して、彼女の気配は静かに、


静かに、消えていった――。