【黄昏の記憶】~ファースト・キスは封印の味~


彼女は小さく頷くと、柔らかい笑みを浮かべ、優花の肩にそっと両手を伸ばし抱き寄せた。


フンワリと、微かに漂う花の香り。


彼女の大好きだったという金木犀の甘い香りが、優しく心に染み入る。


『ねえ、優花ちゃん』


「うん?」


内緒話をするような耳打ちに、小首をかしげる。


『まだ、晃一郎を引き受けてくれる気にはならない?』


「……」


三年前、


優花は同じことを問われ、そして『否』と答えた。


あの時は、両親の安否が分からなかったし、晃一郎の気持ちも知らなかった。


両親、祖父母、晃一郎、そして玲子。


大切な人たちの居る『元の世界へ帰る』、


想いを残しながらも、優花には、その選択しかできなかった。