『優花、頼む、落ち着いて聞いてくれ』
「知らないってばっ!」
耳を押さえても遮ることなどできないって、『分かっている』
それでも、優花は両手で両耳をふさいで、ここから逃れようと立ち上がった。
勢いよく地面に落ちてバウンドしたペットボトルが、コロコロと足元を転がり、離れていく。
――だめだ。
ここに居たら、だめ。
晃一郎の強い眼差しを、全身に感じながら、
身を屈めて手さぐりでカバンを掴み、膨れ上がって溢れだしそうな不安を抑え込むように、ギュッと胸に抱え込んだ。
「ごめん、私、先に帰るねっ!」
そう言い捨てて数歩後ずさった次の瞬間、
「優花っ!」
晃一郎の鋭く呼ぶ声が、耳を叩いた正にその時。
思いもよらない強い力で体が前にグイッと引かれ、優花はそのまま、晃一郎の懐に抱え込まれてしまった。



