【黄昏の記憶】~ファースト・キスは封印の味~


「え、何? どうしたの?」


――笑われるようなこと、してないよね?


訝しげに顔を覗き込むと、晃一郎は笑いながら愉快そうに首を振った。


「いや、なんでもない」


って、ずいぶん楽しそうじゃないの。


「なによ?」


じろっと、下から軽くにらんでやったのに、やはり晃一郎は楽しげに笑うだけで。


「もう、変なのっ」


本当に、変!


ずっと、変!


食べ終わったら絶対、積もり積もった疑惑の数々の答えを、とっくり聞いてやる!


と、密かに心に誓い、今はとにかくお弁当を口に運ぶことに専念した。