【黄昏の記憶】~ファースト・キスは封印の味~


お弁当のメニューは、ボリュームが違うだけで二人とも一緒。


やっぱり一押しは、『おばあちゃんの甘い卵焼き』。


ほんのり甘くてふんわりと溶けるような舌触りが、なんとも言えずに美味しい。


小さいころからの、優花の大好物。


他には、鶏肉の入った五目野菜煮に少しピリ辛なキンピラゴボウ。


オカラ入りミートハンバーグに、おばあちゃんが漬けた胡瓜の漬物。


ご飯の上には、のりたまのフリカケが程よく散らばり、赤い彩りは、定番のミニトマト。


鮮やかな緑は、湯がいたブロッコリー。


そして、やっぱり引き締め役は、肉厚の自家製梅干し。


これが又、あまり酸っぱくなくて、フルーティ。


――ああ、美味しいものを食べている瞬間って、なんて幸せなんだろう。


いつも心のこもった美味しいお弁当を作ってくれる祖母に、心から感謝しつつ、


大好物の甘い卵焼きを、優花がカプッと一かじりした時、同じように卵焼きを口に運んだ晃一郎が突然、クスクスと笑い出した。