【黄昏の記憶】~ファースト・キスは封印の味~


み、見えたっ?


チラリと視線を送ると、晃一郎はそのことには触れずに、若干含みのあるニコニコスマイルで、


「景色も空気も良いし、腹も空いたから、ここで弁当にしようや」と、のたまわった。


「はあっ?」


「弁当。今朝、お前んちのおばあさんが、俺の分も持たせてくれただろう?」


自分のカバンから、大きめの弁当箱を取り出し、かいた胡坐の上でイソイソと広げ始めた晃一郎を、呆然と見つめる。


――そ、そりゃあ、もう二時過ぎなんだから、お腹すいたけど、


確かに、おばあちゃんは晃ちゃんの分もお弁当を作ってくれたけど、もしかして。


「まさか、ここまでお弁当を食べに来たってこと……ないよね?」


恐る恐る聞いたら、


「まあ、それもあるけど。とにかく、食べとけよ。腹が減っては戦はできないってね。先人たちも言ってるしな」


それもあるのか!