【黄昏の記憶】~ファースト・キスは封印の味~



日頃、どちらかというとポーカーフェィスな玲子の、この満面の笑顔は、小説ネタ取材モード全開に見える。


こ、これは、さっきの晃ちゃんの連行劇を見てたなぁ……。


「おはよー、玲子ちゃん」


かなり引きつり気味に、それでも笑顔を浮かべて返事をし、イソイソと自分の席に座って荷物を整理しはじめる。


「いやぁ、すごかったね、今日の仁王様の雷は。まさか原因が御堂とは、びっくりだけど」


玲子はそう言って、前の席のイスをくるりとこちらに向けて腰を下ろすと、豊かな胸の前で両腕を組んだ。


これは、名探偵よろしく、考えごとをする時の玲子のポーズ。


その顔には、『面白いものを見た』とばかりに楽しげなニヤニヤ笑顔が浮かんでいる。


小説ネタ取材モード決定だ。


――玲子ちゃんは、なんとなく晃ちゃんに冷たい、


と思うのは、私の気のせいだろうか?