【黄昏の記憶】~ファースト・キスは封印の味~


「でも、ポチが帰ってきたとなると、いよいよ、優花も、元の世界に戻れるね」


「え?」


少しさびしげに言う玲子に問われ、優花は、初めて、今の状況を飲み込めた。


そうか。


『彼女』が言っていた、『ESP増幅能力を持った、とても可愛らしい、そして、かなり強力な助っ人』


それが、ポチだったんだ。


優花の、空間を飛び越える力。


そして、時空を自在に飛べると言う『ケルベロス』ポチの、ESP増幅能力。


あと、必要なのは、『場所』だけだ。


元の世界に、帰れる。


それは、心から、待ち望んでいたことだ。


事故の後の、両親の安否も、気がかりで仕方がない。


帰りたいと、何度、枕を涙でぬらしたことか。


嬉しい。


とっても、嬉しい。


だけど――、


この心の奥が、ギュッと、締め付けられるように、痛むのはどうしてだろう?