カンカンカン、と、


地下シェルターへと続く、非常灯だけが足元を照らす薄暗い螺旋階段に、パンチングメタルの踏み板を踏む、硬質の足音だけが響き渡る。


優花は、すぐ前を行く晃一郎の背中だけを見つめて、必死に足を動かしていた。


どこまでも続く、円筒状にくり貫かれた、ひんやりとした空間の底は真っ暗で、まるで奈落に降りていくような錯覚を覚える。


――怖い。


恐怖で、出す足がすくんだ。


震える手のひらで、ぎゅっと握りこんだ、スチール製の手すりの冷たい感触が、今置かれているこの状況が、夢ではないのだと実感させる。


スポーツバックと観葉植物の鉢植えは、晃一郎が持ってくれているため、階段を降りる事だけに集中すればいいのだが、その足取りはとても危うい。


気をつけていないと、足を踏み外しそうだ。


「玲子ちゃん、大丈夫かな……? それに、リュウ先生や鈴木博士も……」


晃一郎とて、今、研究所内が、どんな状況になっているのか、知る由もない。


力を使って覗けは可能だが、既に公安の査察が入っている場合、担当官の能力いかんでは、こちらの存在を気取られる恐れがある。


そんな危険は、冒せない。