【黄昏の記憶】~ファースト・キスは封印の味~


やはり、やってもダメなことはあるもので。


人間、諦めが肝心というけれど。


最後の最後まで、この窮地を打破する方法を考えてみたが、やはり、名案は浮かばず、


とうとう優花は、現在、まな板の上の鯉状態。


何度となく訪れた、リュウの研究室の一角にある、診療室。


その中央に設置された、リクライニング式の診察台の上に優花は、ちょこんと、借りてきた猫のように、鎮座したいた。


診察台の上部には、見た目は『電線ケーブルが無数ににょろにょろ出ているヘルメット』な、頭部スキャン装置が付いており、


このケーブルで繋がれた対になっているもう一つの装置をリュウが被り、その記憶を読み取る、というものだ。


今、晃一郎と玲子は、扉一つ隔てた、待合室にいるし、


基本、優花のことは秘密事項なので、普段は診察時にも数人いるという助手も居ず、今はここにリュウと二人きりだ。