【黄昏の記憶】~ファースト・キスは封印の味~


硬質のガラス球を思わせる、感情の見えない碧い瞳。


じっと、見つめられていたのは、たぶん数瞬のこと。


すぐに相好を崩した黒田女史は、ニコニコと優しい笑顔で、右手を差し出してきた。


「これからも、よろしくね。美咲さん」


「あ、こちらこそ、よろしくお願いします!」


反射的に出した右手が、思いのほか強い力で握り返され、優花はぎょっと黒田女史の顔を凝視した。


その表情は、笑顔のまま変わらない。


変わらないのに、


優花の中に走ったのは、生理的な嫌悪感。


――やだ、なに、これ?


なんか、いやだ。


気持ち悪い。


まるで、心の中を、腐りかけた棒っきれで、かき回されているみたいだ。


本音と建前のあからさまな、齟齬 《そご》。


それを肌で感じて、優花は、慌てて手を引っ込める。


「おい、どうした? 行くぞ?」


中々降りてこないことを心配した晃一郎の声が飛んできて、ハッと我に返った優花は、ペコリと頭を下げて、慌ててその場を逃げるように後にした。