【黄昏の記憶】~ファースト・キスは封印の味~


ずる休みの定番は、仮病と相場がきまっている。


「え~~と、今日は、ちょっと体調悪くてっ。あの、だから、リュウ先生のところへは、また今度ということで……」


「体調が悪いって、どういうふうに? 熱はあるのか?」


真顔で、晃一郎に質問を返され、優花は更に固まった。


墓穴を掘った。


外科とはいえ、仮にも医者の前で『体調悪い』は、禁句だ。


「優――」


「あ、やっぱりいいです、今のはナシで!」


いぶかしげな表情を浮かべて、晃一郎が額に伸ばしてきた左手を、優花は一歩後ずさって回避する。


この空気では、晃一郎は、そのままこの場で診察を始めかねない。


晃一郎は、リュウ以上の能力者だ。


何かの拍子に思考を読まれでもしたら、その場でアウト。


優花の努力も、水の泡だ。


だいいち、


リハビリで手足に触るのとはわけが違う。


知り合いに、


それも、あのセクハラ大魔王に、


『はい、あーんと、口あけて』だの、


『はい、胸の音聞くから、前を開いて』


などされたら、恥ずかしくて、悶え死ぬ。