【黄昏の記憶】~ファースト・キスは封印の味~


昨日まで当たり前にあった存在が跡形もなく消えてしまう、残酷な現実。


泣いても、喚いても、埋めることの出来ない、心に空いた喪失感。


それを、優花は、嫌というほど身に染みて知っている。


こういう時、言葉は何の慰めにもならない。


――だから、せめて。


私は、いつも通りでいよう――


優花は心密かにそう決意し、


「ごちそうさまでした。さてと」


空になった食器を重ね、それを持ってキッチンへと足を向けた。


生きている者は、食べなくてはいけない。


それがどんな時でも。


食べて、次への一歩を踏み出す英気を養うのだ。


そう思えるようになるまでには、たくさんの時間がかかった。


そして、


そう思えるようになったのは、確かに、目の前にいる優しい幼なじみの存在は大きかった。