【黄昏の記憶】~ファースト・キスは封印の味~


壁掛け時計にチラリと視線を走らせれば、時計の針はもうじき九時。


「いいよ。晃ちゃん、お仕事あるでしょ? あ、ほら、もうこんな時間だよ? 患者さん、待ってるよ?」


これ幸いと、早く仕事に行けオーラを全開で放出しながら進言するも、


「心配するな、今日から俺は、三日間は完全オフだ」


にっこり、笑顔で即却下。


――うげげ。 


なによ、それ?


今まで、休みを取ったところなんて見たことないのに、


なんで、いきなり三連休なの!?


何の因果か、誰かの陰謀か。


事実は、休みを取らなさ過ぎる晃一郎の勤務態度に業を煮やした上司が、強引に休みを取らせた、という純然たる偶然に過ぎないが、


優花にしてみれば、敵も、なかなかに手ごわい。


でも、ここで負けてなるものか。


『彼女』との約束だけは、守らなければ。


尚も、優花は、苦しい抵抗を試みる。