胸が痛い。
胸の奥がぎゅぅっと、締め付けられるようで、優花は思わず目を閉じた。
閉じた瞳からは、ポロポロポロと、せきを切ったように涙の雫がこぼれ落ちる。
どうして、こんな悲しいことが起こるのだろう。
互いに想いあっている恋人どうしが、触れ合うことができないなんて。
『優花ちゃんに、お願いがあるの』
少し、トーンの落ちた彼女の声に、優花ははっと涙に濡れた視線を戻した。
『私のことは、誰にも言わないで。もちろん、この人にも』
静かな声音で、でも、確かな意思がこめられた強い響きで、彼女は、優花に乞うた。
「え? だって……」
触れられなくても、こうして彼女はまだ生きている。
生きているのに、その事実を恋人に告げるなという。
優花には、理解できなかった。
自分なら、たぶん、真っ先に大切な人に会いに行くだろう。
たとえ、自分が幽霊だとしても。



