【黄昏の記憶】~ファースト・キスは封印の味~


『ばかね。こんなに無理をして。本当、ばかなんだから』


彼女は、優花の涙をぬぐった白い指先を、晃一郎の髪へと伸ばした。


たぶん、撫でるつもりだったのだろう、その指は、するりと晃一郎の身体をすり抜けてしまった。


「え……?」


――どうして?


私には、触れられるのに。


優花は、言葉もなく、その光景を見詰めていた。


もう一度、


今度は、その指先が、晃一郎の頬に伸ばされる。


そっと添えられた手は、やはり、するりと、その身体をすり抜ける。


『やっぱり、だめね……。私の存在を感知できるのは、イレギュラーの優花ちゃんだけみたい』


彼女は、微笑んでいた。


でも、泣いている。


涙を流しているわけではないが、


確かに、彼女は全身で慟哭していた。