【黄昏の記憶】~ファースト・キスは封印の味~


「ありが……た」


『え?』


不明瞭な優花の言葉に、彼女は、少女めいた仕草で小首をかしげる。


優花は、波立つ感情をどうにかねじ伏せて、もう一度、か細い声をしぼりだす。


「助けてくださって、ありがとうございました」


晃一郎の下敷きになったまま身動きの取れない優花は、頭を下げることはできないが、せいいっぱいの謝辞をこめて、ぎゅっと目を瞑った。


ポロリ、と、


意図せず、頬を、一粒の涙が零れ落ちる。


彼女は、驚いたように目を見張り、その涙を、白く細い指先で優しくぬぐい取った。


『こちらこそ、ありがとう』


「え……?」


彼女に礼を言われることなどした覚えのない優花は、きょとんと目を見開く。


『私のために、泣いてくれてありがとう。あなたは、とても優しい子だね』


それに、『この人の側に居てくれて、ありがとう』と、


彼女は、初めて晃一郎に視線を向けて、どこか寂しげに微笑んだ。