【黄昏の記憶】~ファースト・キスは封印の味~


幼なじみのお隣さん。


外見もイケメンの部類で、学業優秀、スポーツ万能。


性格も、まあ申し分なし。


これだけ好条件が揃っていたら、もっと色っぽい展開がありそうなものだけど、不思議なくらいその気配はない。


なかった、はずだったのに……。


あの夢のせいで、変に意識してしまう自分がいる。


朝のダイニングキッチン。


四人掛けのテーブルには、いつものように、祖父の隣に祖母、


祖母の向かい側に、結局シャワーを浴びそこねた優花。


その優花の左隣には小ざっぱりとした風情で、如月家定番の和風朝食を、モリモリと小気味よく胃袋に収めている晃一郎がいる。


ああ、もう、緊張しちゃうなぁ。


なんて、左半身に神経を集中させながら、祖母特製の甘いだし巻き卵を、おちょぼ口でモギュモギュ飲み込んでいたら、


「それにしても、急な事で大変ねぇ、晃一郎君……」と、


食後のお茶の用意を始めた祖母が、気の毒そうに、ため息混じりのつぶやきを漏らした。