【黄昏の記憶】~ファースト・キスは封印の味~


人間、満腹になると、元気になるもので、


キッチンカウンターから、部屋の中央に置かれたソファーセットに場所を移し、


食後のお茶を飲むころには、予期せぬ大失態で沈没していた優花の気持ちも、だいぶ浮上してきた。


基本、落ち込みやすいが、立ち直りも早いのが、優花なのだ。


「はい、御堂先生リクエストの、渋ーい、お茶でーす」


優花は、晃一郎の前のテーブルに大き目のマグカップに入れた緑茶を置くと、自分用の適度な濃度のお茶入りマグカップを片手に、反対側のソファーに、ちょこんと腰掛けた。


「おう、サンキュー」


優花がいれた、濃い目の渋ーい緑茶を『ずずずっ』、とひとすすりしたあと、


ふと思いだしたように、晃一郎が質問を投げてきた。


「そう言えば、リュウの所のESP訓練、どんな感じだ?」


リュウ――、


リュウ・マイケル・タキモトは、優花よりも五つ年上の、二十歳。


晃一郎の友人で、この研究所の研究員でもある、ESPカウンセラーだ。


精神科医の資格を有し、職員のカウンセリング業務を受け持つ一方、


地下四階で、主にESP開発研究と、その訓練を行っている。


彼自身も、強力なテレパシー(精神感応能力)をもったAクラスのエスパーで、


少しクセのある燃えるような赤毛と、深い水底のようなディープ・ブルーの瞳を持った、美青年だ。