覆水は盆に返らず、
優花の質問に、晃一郎の箸がピタリと止まる。
「……」
落ちた沈黙が、痛かった。
――ばか、ばか、ばかっ!
如月優花の、考えなしの、おっちょこちょいっ!
人の傷口に塩を塗りこむような真似をしてしまった自分を、心の中で罵倒したおしながら、優花は、かすれるような声を絞り出した。
「ごめんなさい……」
ぺこりと頭を下げたまま、顔が上げられない。
怖かった。
今、晃一郎が、どんな表情をしているのか、見る勇気がなかった。
無神経な質問をするなと、怒っているのだろうか?
それとも。
帰っては来ない人を思い出して、悲しんでいるのだろうか?
まんじりともできずに、顔を上げられないでいる優花の耳に届いたのは、そのどちらでもないような、穏やかな声音だった。



