【黄昏の記憶】~ファースト・キスは封印の味~


「えへへへ。よかったー。おかわり、たくさんあるから、いっぱい食べてね!」


思ってもみなかった高評価に、優花は、ほっと胸をなでおろして、自分を朝食を口に運ぶ。


――うん。美味しいー。


元の世界にいたころ、朝食は、必ず家族全員で食べていた。


共働きで勤め人の両親は、残業で夕飯を一緒に取れないことも多かったが、それでも、祖父母が必ず一緒に食卓を囲んでくれていた。


誰かと一緒に、おしゃべりをしながら食事をする。


それが、どんなに心を満たしてくれるものなのか。


こうして、一人になってみて初めて、優花は、そのありがたみを肌で感じていた。


「見直したよ。料理の腕前だけなら、すぐにでも嫁にいけるぞー」


「あははは……。もらい手がいないからだめだよ」


――なにせ、彼氏いない歴イコール、年齢イコール、十五年だもん。


「そうなのか? んじゃ、売れ残ったら、俺がもらってやるよ」


愉快そうに放たれた言葉に、優花の鼓動は、ドキン、と大きく跳ね上がった。